夢見る契約社員は御曹司の愛にスカウトされる
 祐樹はうなずいた。

「まずは千堂製菓でお茶を入れた菓子を海外向けに作ることができれば、そこからお取引できるかと思います。ただ、すぐには無理です。そこまでしばらく待っていただけますか?遅くとも一年以内で形にできるよう頑張ってみますが……」

「わかりました。しかし、突然来られてまさか、両社の御曹司とは知らず……驚きました……唐突すぎて正直あまりにも……」

「そうよ!祐樹さんはいっつもそうなの!突然驚くようなことを言うのよ」

「僕もこんな予定ではありませんでした。彼女を正社員として僕の部下にすると彼女に報告したら、縁談があってと急に断られたんです。正直困惑しました。突然の申し出、失礼をどうかお許しください」

「いいえ。莉愛お前、助けていただいたんだぞ。その態度はなんだ。花邑さんと結婚は嫌だったんだろ?私も久しぶりで彼に会いましたが、会って話したらかなり後悔しました。シェアを横取りされて、頭が回ってませんでした。お恥ずかしい限りです」

「やはりそうでしたか」

「ええ。ところで……あの……莉愛へのプロポーズというのは……嘘ですよね?あの場で話に加わるための方便ですか?」

 莉愛と祐樹は目を合わせた。しかし、祐樹が口を開く前に莉愛は目を反らした。

 莉愛は彼が素性を黙っていたことが何より許せなかったし、結婚なんて絶対できないと思った。

 それに今思えば、彼は御曹司なんだから莉愛を正社員にするなんて割と簡単だったのかもしれないと思った。

 あたかも大変だったかのように恩着せがましく言っていた彼を許せなかった。

 祐樹は莉愛の様子を見てため息をついた。

「僕は一応半年間の一時帰国なので、いずれ海外へ戻らないといけないんです。でも、今度帰るときは、彼女と一緒に夫婦として帰りたいと思っています」

「「え?!」」

 母と莉愛は声を合わせた。父はごくりと唾をのんだ。
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