夢見る契約社員は御曹司の愛にスカウトされる
そう言うと、祐樹は携帯を見た。
「まずいな。修二から着信が5件もある。昼休みと二時までの時間しかもらってなかった。もう三時半だ。彼女も知っている僕の怖い秘書が怒ってます。申し訳ないですが、今日はこれで失礼します」
莉愛は自分のことしか考えていなかったことに今頃気づいた。そして祐樹に頭を下げて謝った。
「ごめんなさい。私、自分のことばかりで……お礼を言うのが先でした。本当にありがとうございました」
祐樹は黙って深く莉愛の両親に頭を下げて挨拶をした。そして莉愛を堂々と無視して玄関へ歩いて行った。
莉愛は彼が怒ったのを見て、助けてくれたのに、望みをかなえてくれた人にひどい言い方をしたことにようやく気づいた。
焦った莉愛を見た彼女の母は、そっと背中を押してくれた。
莉愛は玄関に走り出した。そして叫んだ。
「祐樹さん待って……待ってください!」
「待てない。言っただろ、時間がない。勝手なことをしたから、サエキの父も、修二も相当怒ってる」
彼は振り返らず車に向かって歩いていく。
莉愛は彼の背中に向かって言った。
「エンジンをかけてちょっとだけ待っていて。すぐ戻るわ」
莉愛は玄関から工場に通じる部屋へ入り、ちょうど碾茶を石臼で引いているところから出来立ての抹茶を缶に詰めてもらってきた。
エンジンをかけたまま待っていてくれた彼に、運転席の窓から渡した。
「これ……うちの今年の新茶から作ったできたての抹茶です。良かったらどうぞ。この香りが私のハンカチの香り。祐樹さんの言う私の一部です」
祐樹は鼻を近づけ息を吸った。そして大きな目がさらに大きくなった。満面に笑みが広がった。
「まずいな。修二から着信が5件もある。昼休みと二時までの時間しかもらってなかった。もう三時半だ。彼女も知っている僕の怖い秘書が怒ってます。申し訳ないですが、今日はこれで失礼します」
莉愛は自分のことしか考えていなかったことに今頃気づいた。そして祐樹に頭を下げて謝った。
「ごめんなさい。私、自分のことばかりで……お礼を言うのが先でした。本当にありがとうございました」
祐樹は黙って深く莉愛の両親に頭を下げて挨拶をした。そして莉愛を堂々と無視して玄関へ歩いて行った。
莉愛は彼が怒ったのを見て、助けてくれたのに、望みをかなえてくれた人にひどい言い方をしたことにようやく気づいた。
焦った莉愛を見た彼女の母は、そっと背中を押してくれた。
莉愛は玄関に走り出した。そして叫んだ。
「祐樹さん待って……待ってください!」
「待てない。言っただろ、時間がない。勝手なことをしたから、サエキの父も、修二も相当怒ってる」
彼は振り返らず車に向かって歩いていく。
莉愛は彼の背中に向かって言った。
「エンジンをかけてちょっとだけ待っていて。すぐ戻るわ」
莉愛は玄関から工場に通じる部屋へ入り、ちょうど碾茶を石臼で引いているところから出来立ての抹茶を缶に詰めてもらってきた。
エンジンをかけたまま待っていてくれた彼に、運転席の窓から渡した。
「これ……うちの今年の新茶から作ったできたての抹茶です。良かったらどうぞ。この香りが私のハンカチの香り。祐樹さんの言う私の一部です」
祐樹は鼻を近づけ息を吸った。そして大きな目がさらに大きくなった。満面に笑みが広がった。