夢見る契約社員は御曹司の愛にスカウトされる

「とにかく人を追い詰めるのが大好きなやばい奴なんだよ。昔っからそういうところがあってさ。弟の俺はどれだけ大変だったか話すだけで数日かかるぞ。四年前から兄貴が日本にいなくなってほっとしたのに、帰ってきたからここ最近大変だよ。いわゆるドSだから気をつけろ」

　確か祐樹もそんなことを言っていたような……莉愛は時計を見て驚いた。

「ごめん、午後一番で人事へ行くことになってるんだ。手続き行くから、会えるかもね。とにかく今後もどうぞよろしくね」

「ああ、とりあえずよかったよ。何かあればこっちに顔出せよ」

「うん。ありがとう」

　☆　☆　☆

　莉愛は人事部で説明を受けていたが、なんだか視線を感じる。

　人事の担当者の男性が振り向いて言った。

「藤野課長、何か？」

　振り向くと莉愛は驚いた。

　そこには背の高い美しい女性が扉に寄りかかって立っていた。顔を見て驚いた。祐樹にとても似た顔立ちだったからだ。

　しばらく彼女の顔に見とれていたら、気づいた彼女は莉愛に微笑み、隣の担当者に小さな声で言った。

「そっちが終わったら彼女をこっちの部屋へ通して」

　綺麗な女性は指を隣の部屋へ向けた。

「わかりました」

　担当者がそう言うと、祐樹に似たあの笑顔で莉愛に手を小さく振るといなくなった。

「あの、今の……」