夢見る契約社員は御曹司の愛にスカウトされる

「祐樹ったら、千堂の実家に全く寄り付かなかったのに、おととい急に現れてあなたと結婚したいと言い出したの。あ、私は父と同居しているのよ。父も、私も、主人もびっくりよ。祐樹の兄である和樹も出かけていたのに急に呼び戻されてね、和樹はあなたを祐樹に頼まれて正社員にしたというじゃない。もう何が何だか、あなたが今日来るというから直接確認しようと思ってね」

「……あ、あの……それは本当なんでしょうか？実はプロポーズされた日から連絡がなくて……」

　彼女は目を丸くした。

「え？そうなの？だってあなたのご両親にも伝えてあると言ってたけど、嘘だったの？」

「あ、いいえ、確かにそれはそうなんですけど、もしかするとそれはあくまで私の縁談を壊す為の口実だったのかもしれないなんて思い始めていました」

　すると、バタバタと音がしてノックもなくバン！と勢いよく部屋のドアが開いた。

　息を切らせて立っている祐樹がそこにいた。

「姉さん、何してるんだよ！」

「あれ、もう見つかったの？話はこれからだったのに……」

　ぺろりと舌を出した可愛らしいお姉さん。

　祐樹は走ってくると、莉愛の腕を引っ張って立たせた。そして隠すようにして前に立った。

「ごめん、姉から何か言われた？」

「いいえ、何も……」

「何なの、祐樹。私はお父さんじゃないんだから彼女を取って食べたりしない」

「姉さんは母さん代わりなんだから、姑みたいなもんなんだろ？」

「失礼ね、何が姑よ！こんな若い姑いるわけないでしょ、せめて小姑といいなさい！」