夢見る契約社員は御曹司の愛にスカウトされる
 お姉さんはふっと笑った。

「……いいじゃないの、彼女」

「……そうだろ?」

「私達の喧嘩の間に入る度胸がある。これなら父さんと何かあっても大丈夫よ。合格だわ」

「そうだろ、そうだろ。だから言ったんだよ」

「祐樹はどうせ急いでるんでしょ?」

「ああ」

「じゃ、ひとつだけ……本山さん、私はあなたたちを応援するから頑張ってね」

「「え?」」

「知り合ってすぐだとか、背景に色々あるとか関係ないわ。祐樹、あの時も私は父さんに言ったけど……あなたが選んだ人なら大丈夫だろうと私は思ってた」

「姉さん……」

「ただ、昨日父さんが言ってたけど、サエキの叔父を納得させないと無理よ。今はもうあなたの父親はサエキの叔父だもの。うちの父さんは反対する権利がすでにない。和樹の言う通り、取引のことで勝手に色々やってしまったならきちんと責任をとるつもりで話し合わないとあっちでも父親と仲が悪くなるわよ」

「わかってる」

 やっぱりそうだったのか。縁談を壊すために、祐樹はあの場で花邑茶舗との取引をサエキ商事と急いで無理に決めさせたんだ。

「祐樹さん……花邑茶舗とサエキ商事の取引の件、勝手にやったんですか?そんなの……」

 祐樹はため息をついた。
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