夢見る契約社員は御曹司の愛にスカウトされる
「実は以前お話していた新しい商品が近々入ります。洋酒入りのものも、ドライフルーツやナッツを入れたものもあります。パッケージはこんな感じになります」

 海外で買収した新しい会社の商品だ。朝礼で話していたものだが、担当者にタブレットを見せた。

「なんかさ、相変わらずパッケージがださくない?センスないよね、お宅の会社。もっと洒落た感じにできないの?ま、こんなチープな感じだとプレゼントとか絶対大人は選ばないよね」

「……そうですか……」

「そうだよ。本社に言った方がいいと思うな。ま、僕の意見だけどね」

「はい。貴重なご意見ありがとうございました。次回からこの間ご挨拶させていただきました原田がこちらの担当をさせていただきますので、どうぞよろしくお願いします。今までお世話になりました。どうもありがとうございました」

 莉愛は深々と頭を下げた。

「原田さんみたいな男性より、僕は断然本山さんがよかったのにな。いつも僕の意見をこうやって聞いてくれるじゃない。僕は君がいいんだけどな。ねえ、今後はプライベートでたまに食事でもどう?携帯交換しない?」

「すみません。私、彼氏がうるさくてそういうのダメなんです」

「えー、そうなの?残念だな」

「じゃあ、失礼します……」

 莉愛はため息をついた。彼氏がいるなんて嘘だ。

「あの人、うちの商品を絶対嫌いでしょ。悪口ばっかり。最初っから彼氏どころか友達だって対象外だわ」

 莉愛はその後二軒のルート営業を終えると、とりあえず事務所に戻った。
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