クリスマスには甘い予約を
 十二月って、どうしてこんなに気ぜわしいんだろう。
 私はいつものように会社でパソコンに向かいながらふと思う。
 街全体がそわそわしていて、寒さに身を縮こまらせながらもどこか楽し気に見えてしまう。

 古今東西のクリスマスソングに赤と緑と白、金色の飾り。
 雪のマークにクリスマスツリー、サンタの赤い衣装。
 子供のころから見慣れたものなのに、毎冬、少しずつ形を変えて登場し、飽きることなく人の心を掴んでいく。

「このどうしようもないイベント感……すさまじい」
 浮かれるものかと反抗的に気を引き締めたところで、ついついクリスマスセールには寄ってしまうし、クリスマス限定のショートケーキを買いたくなってしまう。

「前田さん、クリスマスの予定って決まってます?」
 後輩に聞かれ、私は首をふる。

「今年もなにもないわ」
「こんな美人の前田さんがなにもないなら、私なんてなおさら無理」
 後輩はため息をついて肩を落とす。
 彼女はなぜか私を美人認定していて、なんだか照れ臭い。

「美人っていうのはあの人みたいなこと言うのよ」
 私は会社で一番の美人と噂の榛名さんを見て言った。営業でばりばり働いているキャリアウーマンだ。

「あの人は別格。あの人は恋人いるって噂だし、いいなあ」
「ひとりもいいものだと思うけど。どうせ平日で仕事だしね。飲みに行きたくてもお店も混んでるし、大人しくひとりでケーキでも食べることにする」
「私もそんな感じかなあ。ゲームのクリスマスイベでもやりながら」
 後輩がつぶやく。
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