ヤドリギの約束
「ごめん、後輩がミスってお得意先が激怒して。謝ったり仕事をやりなおしたりでバタバタしてた」
「良かった、あなたが事故に遭ったとかじゃなくて」
 ほっとしたら、なんだか目が潤んでしまった。

「心配かけてごめん」
 彼は私の頭を撫でて席に着く。

「遅れたことに怒ることなく心配してくれるとか、俺の恋人は天使かな?」
「やめてよ」
 私はこそばゆい気持ちになって目をそらした。

 隣には愛しい人、窓の外にはきらきらと光る夜景。
 ようやく私のクリスマスが始まった。



 食事を終えて店を出ると、一緒に公園のイルミネーションを見に行った。
 たくさんの人でごった返す中、メインのクリスマスツリーに辿り着く。

 大きな木にたくさんの光が点滅し、多くの人がその木の前で写真を撮っている。
 私たちもふたりで撮影していたのだが、ツリーの根本の札にクリスマスの豆知識が書かれていることに気が付いた。

「クリスマスには、ヤドリギの木の下にいる人はキスを拒否できない、断ると次の年は結婚できないんだって」
 私が言うと、彼が続きを読み上げる。

「ヤドリギの木の下でキスをしたカップルは幸せになれる、かあ」
「私、ヤドリギって見たことないかも。日本にあるのかな」

「あっちで見たことあるよ」
 言いながら、彼は歩き出す。
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