ヤドリギの約束
 しばらく行った先に、その木はあった。
 葉が枯れて丸裸になった大木の樹上の一部が、球状にこんもりしている。

「あれ、ヤドリギだよ」
「へえ、あんな感じなんだ。初めて見た」

 木の枝に大きなまりもがくっついているかのようだった。
 感心して見上げていると、くすり、と彼が笑う。

「ヤドリギの木の下に立ってるね」
 言って、彼の顔が近付いてくる。

「ちょっと、外だよ」
「拒否したら結婚できなくなるよ」

「そ、そんなの」
 動揺した私に構わず触れるだけのキスをして、彼は離れた。

「もう……!」
「これで俺たちは幸せになれるだろ?」
 私は照れてしまって、声もなく彼に頬を寄せた。

「だから、結婚しよう」
 思いがけない言葉に、私は驚いて彼を見た。

 彼は笑顔で私を見返す。
 その眼差しには愛だけがあふれていて、私の胸をただ温かくしていく。

「——はい」
「良かった!」
 彼は私を抱きしめて喜ぶ。

「一緒に幸せになろう!」
 私はその背に手を回し、抱きしめ返す。

 ヤドリギに見守られる中、私と彼は再びキスを交わした。
 ふたりの幸せな未来を思い描きながら。






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