溺愛の業火
豹変
縛られた私の両手を、彼は数本の指で押さえて優位を示す。
「お礼はキスでいい」
誰が原因で、こんなことになったのか理解しているくせに。
「嫌よ、付き合ってもいないのに。」
「告白した俺は、そのつもりだけど?」
彼は私の鼻を持ち上げるように摘まみ、息継ぎ待ちで、顔を近づけてニヤリ。
指でかけていた圧力が緩まったかと思ったのも束の間。
空いた方の手は、私の縛られた手首をしっかりと捕らえ直す。
私の背には壁で逃場はない。
悔しい。絶対に負けない。
そう固く口を閉ざすけれど、息苦しくて体がプルプル震える。
目で「嫌だ」と睨んで私が訴えると、彼は視線を逸らさずに冷たい表情。
まるで「じっくり待ってやる」と言うような沈黙で、私を見つめ続ける。
ムカつく。イラつく。どうして分かってくれないの?断ったじゃない。
未熟な自分。あなたの感情に追いつけない。無理、お願いだから分かって欲しいのに。
そんな私の気持ちもお構いなしで…もう限界……
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