溺愛の業火
『松沢くんの恋3』
体育の着替えの為、女子更衣室は混雑していた。
そんな中で視線を感じ、後ろを振り向く。
そこに居たのは3人。
私と視線が合ってから、狭いのに詰め寄って来た。
「篠崎さん、清水くんとはどこまで?」
「体に、痕とかないの?」
目を輝かせて質問攻め。
「あはは。まだ、そんな関係じゃないのよ~。」
眼が泳いで、適当にはぐらかした。
「何だ、そっかぁ。付き合ったばかりだもんね。」
「ほら、清水くんは真面目だから。」
「また詳しく教えて。」
女の子は恋話が好きだな。
ふふ。真面目だからって、手を出さないとは限らないですけどね。
今は不味い。
思い出すと、恥ずかしくて顔が熱くなるから他の事を考えよう。
体をロッカーの方に向け、上服を脱いだ。
ふと、視線に入った物に思考停止。
隣の女の子の鎖骨に、キスマーク。
思わずガン見して、誰なのか確かめる為に視線を顔に移動。
嘘。クラスで静かな子だよ?大人しいイメージがあるのに!
確か、放課後は図書室によく居るよね。
部活にも入らず、放課後に独りで小説とか……
ん?
「どうかしましたか?篠崎さん。」
「あの、その。」
見ていたのに気づかれ、慌てて言葉が出ない。
私が見ていた場所に彼女が気付き、思わず息を呑んだ。
「あれ、虫に刺されたのかな。こんなところが赤くなってる。」
呆気ない言葉に、目が点。
は?虫?こんな時期はずれに、虫って言ったよね、今。
本当に?本人に自覚がないなら、そうなのかな。
だけど、これは……どう見ても…………
あの虫しか、思いつかないんですけど。
放課後、名前を伏せてから松沢くんに探りを入れてみる。
「くすっ……鈍感なのが可愛くて、癖になる。」
松沢くんも純粋?
思わず相手に『逃げてぇ~~』と叫びたくなった。
「俺の恋路を邪魔すれば、清水にあることないこと言っちゃうぞ♪」
黒い笑顔が怖いですね。
松沢くんは、相手を守れないというより、自分が抑えられないだけかもしれないな。