溺愛の業火
夏休み感謝短編

タイトル『鬼畜?』

タイトル『鬼畜?』

視点:清水 一颯(しみず いぶき)
登場人物:松沢 燎(まつざわ りょう)


「お前ら、恋に溺れて周りが見えなくなってんぞ。」

偉そうに俺の前に立ちふさがり、幸せを邪魔するかのような言葉を吐き捨てるのは、最近調子に乗っている松沢だ。

「ふん。お前こそ、どこで何をしているんだ?」

「な、んでっ……」

松沢は思い当たることがあるのか言葉を留め、視線を逸らした。
図星の様だ。

「学校の風紀を乱されるのは、生徒会長として困るんだけどな。」

全く、放課後にフラフラしていたのは知っていたけど。
いや。例の好きな子と上手くいっているんだな。
少し安心したか。

「公で風紀を乱してんのは、お前の方だぞ!俺たちは目立たない室内だし……って、俺の事は良いんだよ。」

惚気たいのだろうか。
少しイラついてきたかな。

しかし、俺と和叶が公に風紀を乱した覚えなど……
記憶を遡るけれど、思い当たることが無い。

「自覚がないのは、さすがに俺もビックリだけど。生徒会室の私用に留まらず、教室でのキスは控えた方が良いぞ。篠崎が後々、困ることになるんだからな。」

松沢は呆れたようなため息を吐き、バカにしたような笑いを浮かべる。

教室でのキス。
どれの事だろうか。

「まさか常習なのか?そんなに篠崎の優しさに付け込んで、お前、どんだけ鬼畜なの?」

鬼畜?失礼な。
それを言うなら、キスどころじゃないぞ……あんな事まで……

さすがに、あれは教室では不味いか。
見られたのがキスで良かったのか?

松沢に対する怒りが一瞬で通り過ぎ、自分のやらかした不埒な行為に動揺が生じる。

「……で、どんな噂が流れているんだ。教師からの呼び出しとか、あるだろうか。」

俺は生徒の代表でありながら。
同じ事をしているとはいえ、今回は松沢の言う通りだ。


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