溺愛の業火

タイトル『Kiss*kiss』


タイトル『Kiss*kiss』
視点:篠崎 和叶(しのざき わかな)
登場人物:清水 一颯(しみず いぶき)


最近、一颯くんは生徒会が忙しくて、なかなか一緒に居られない。
そんな日々を繰り返し、物足りなさを感じる自分の我儘に自己嫌悪。

今日は他の生徒会メンバーが帰ったから、少しだけ教室で待っていて欲しいと言われて待機。
待ち時間20分を過ぎたけれど戻ってこない。

片付けが長引いているなら、手伝おうかな。
彼の荷物も持って生徒会室に向かおうとした。

「和叶、ごめん。遅くなった!」

走って来てくれたのかな。
息を切らして、額から汗がにじんでいる。

「私は急いでないから、とにかく座って。」

すすめたイスに座って、息を整えようと目を閉じている一颯くん。
男の子に色気があるなんて言っていいのか分からないけれど、ドキドキしてしまう。

ポケットからハンドタオルを取り出し、彼の額を拭う。

「ごめん、汚れるから。」

彼が私の行動を制するために掴んだ手首に、熱が伝わる。
それが体を、思いもよらない行動へと誘う。

私はそっと顔を近づけ、彼の目元に軽いキスを落とした。
私に視線を向けたままで一時、見開いた目。

何が起こったのか理解できていないようだ。

手首に加わる力が強くなる。
一瞬で焦りが生じた。

自分が何をしたのか私自身が理解して、彼も理解したんだろう。

「和叶。」

彼に名前を呼ばれ、私は気恥ずかしさで視線を逸らす。

手首を掴んだまま、彼は身を寄せるようにして立ち上がった。
近い距離。視線を逸らした私には、彼の表情や感情は読み取れない。

目をぎゅっと閉じ、体を逸らして身構える。

「和叶、こっちを見て。俺の方に向いて。」

優しい声に安堵して、体の緊張が緩む。
ゆっくり視線を向けると、彼は真剣な眼差しで私を見ていた。

心臓が跳ねるように、速さを増していく音。
息苦しい。

どんな表情をしていいのか分からない。
視線がさ迷う私の戸惑いを知ってか知らずか。彼は私の額に口づける。

そして目元や頬をなぞるように、微かに触れる愛撫。
息遣いが伝わる。

もう時間が経って、落ち着いた後だから走ったからではない。
少し乱れた吐息。

私への欲情。
煽ったつもりなんかない。だけど。望んでしまう。

目を真っ直ぐ向けて、そっと閉じていく。
顔を上げて彼の唇を誘った。

優しく重なるキス。
目を開けると、切れ長の目が私を捕らえ、深く沈むような強い口づけ。

息苦しさに甘さが入り交じり、熱と言い表せない感覚が思考を乱す。
恋い焦がれて、彼の愛情が足りない。

私の身を滅ぼすような想いは貪欲に染まる……




kiss*kiss
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