溺愛の業火
これは昨日より攻撃力の高い、攻めですけど!
松沢くん、どんなアドバイスをすればこんな事になるのか教えて欲しいんですけど?
抱き寄せる力が強くて、痛い訳じゃないけど逃げられないのを実感する。
彼の熱や息遣いも伝わって、何を言えばいいのかも思いつかない。
「うわぁ。清水、それはないわ~~。この件で、昨日お前と一緒に帰る約束していた俺の立場を返せ。」
見られた。助ける風でもなく、呆れるように頭を押さえてしゃがみ込む松沢くん。
「押して駄目なら引けって言ったけど、物理的な話じゃないぞ?」
唸る様に言葉を吐き出し、清水くんを睨みつけた。
腕を引かれたのは、そんな理由ですか?
「何人もの女性に不誠実なお前のアドバイスなどと侮っていたけど、これは悪くはない。」
上からの声に視線を向けると、清水くんは幸せそうな笑顔。
私は言葉を失い、足の力が抜けて床に座り込んでしまった。
「お前、俺の事をそんな風に思っていたわけ?俺は、お前ほど相手の気持ちを無視したりしねぇ~ぞ!聞いてんのか、この恋愛音痴。篠崎が困ってんだろ、離してやれ。」
清水くんは、力の抜けた私の片手をずっと掴んでいる。
「今度は逃がさないから。」
見たことがない彼の黒い笑顔。
清水くんにとっては押しも引きも、私への攻めにしかならないのだと覚悟した。
「怖い。」
涙で視界が霞む目を拭って、視線を逸らす。
捕まった手を抵抗するように揺らしてみるけど、手首に加わった力は強くなるだけ。
「…嫌い。」
自然に出た言葉。
同時で清水くんを睨みつけ、思いっきり手を払う。
力が緩んだのか掴んでいた手が離れ、私は逃げるように走る。