もっと、キミと
スラリとした体型に、風になびく柔らかそうな茶色い髪。
座っていても、楽に伸ばしている脚は長い。
控えめに浮かべている笑みは、彼の顔立ちを引き立てていた。
綺麗な顔の大きな瞳にぐっと吸い込まれそうになる。
それほど、彼はじっと私を見つめていた。
「え……?」
「ここ、柵とかないから風が吹いたらおっこちちゃうから。ほら、こっちにおいで」
まるで、幼子に話しかけるような優しい声音で空いている隣をトントンと手で叩いて招かれた。
……こんな簡単なことで、揺れそうになっている。
「来ないなら、こっちから行っちゃうよ?」
この場から意地で動けなくなっている私に、すっと立ち上がった彼が一歩ずつ近付いてくる。
えっ、えぇっ?
一体、どういう展開?
ワケが分からず、一歩近付かれると後退りしてしまう。
柵はなくても、段差はある。
一歩近付くたびに、一歩退いていたら後ろ足で段差につまづいてしまった。
「ひゃっ……」
落ちてしまう。
落ちて、リセットしようとしたけれど、意図しない形になると、恐怖と後悔でぎゅっと強く目を閉じた。
地面に落下する時、どんな感覚なのだろう。
やはり、痛いのだろうか。
それとも、一瞬で意識がなくなるのだろうか。
死ぬ直前なのに、意外と冷静だった。