もっと、キミと
それは、いつまで経っても想像していたものが襲って来なかったからだろう。
それどころか、温かさに包まれ、ふわっとした清潔感のある石鹸の良い香りに胸のつっかかりがふっと軽くなる感覚になった。
どういうことだろう。
ぎゅっと強くつむっていた目をゆっくりと開けると、目の前は真っ白だった。
ーーいや、違う。
「あっぶね……ねぇ、だから危ないって言っただろ?」
先程までの柔らかい口調ではなく、焦りが混ざっている。
彼にぎゅっと力強く抱きしめられ、私の顔は彼の胸板あたりに埋まっていた。
視界を白く奪っていたのは、彼の制服のワイシャツだった。
「えっ……えぇっ!?」
男子とこんなに近い距離でぎゅっと抱きしめられるのは初めてのことで、戸惑いと共に声が裏返ってしまった。
な、何ーー!?
何なの、この人!?
と、とにかく……早く離れないと……!
そう思い、ジタバタしたが彼の力が一方的に強くなった。
「だから、暴れないで……ったく」
ひょいっと軽々しく持ち上げられてしまった。
……え、えぇっ!?
こ、これって……お姫様だっこってやつ……?