もっと、キミと
02
保健室登校
「この世にはいないって……どういうこと?」
誰かの冠婚葬祭に参列したことのない私にとって、彼の言葉は想像し難いものだった。
「そのまんまの意味だよ。僕、死ぬことが決まってるからね。来年には、この世にいないと思う」
言葉の割にへらっと笑う彼。
頭がこんがらがりそう。
「えっと……」
この話は、深掘りしても良いものだろうか。
それとも、そっとしておいた方が良いのだろうか。
「僕、癌なんだ。余命宣告も受けてる」
ドラマのワンシーンのような言葉を現実で聞くとは思わなかった。
「それで、キミの答えは?」
「え……答えって?」
「僕に時間をくれる? 手放すくらいなら、僕にくれるのも手だと思うよ。一年あるかどうかの期間だし」
冗談のように思っていた言葉は、真のようだ。
しかし、時間をあげるというのはどういうことなのだろうか。
小難しい顔をして首を傾げると、その疑問を彼が察したようだ。
「何か聞きたそうだね」
「えっと、時間をあげる……というと?」
顎に手を添え、首を傾げると真面目に考えていた私をくすっと笑った。