もっと、キミと
屋上から保健室に着く一つ手前の教室で彼が足を止め、教室に入った。
「え?」
保健室まで一緒に行くと思っていたのに、一つ手前の教室に入るとは思わなかった。
この教室は、ただの空き教室だと思っていたけれど、違うようだ。
「白鳥さん、僕がいない方が間宮先生と話しやすいでしょ?」
「あ、う、うん……。え、えと……名前」
「僕? 僕は、佐倉 樹。でも、傷つくなぁ。僕達、一年生の時同じクラスだったのに」
「えっ……!?」
改めて彼の顔をまじまじと見るが、見覚えがない。
「えっと、一年二組……だったの?」
気まずくておずおずと遠慮がちに答えるが、彼はあっけらかんとしていた。
「うん。まぁ、一週間も通ってないからねぇ。覚えてるわけないか」
軽く笑ってくれることで、そこまで気にしていないと分かりホッとした。
「まぁ、話もそこそこに。じゃ、僕は……自習でもしておこうかな」
「どこにも行かず、大人しくしておきなさいよ」
手をひらひらと振ると、彼は教室は入った。
二人で保健室まで行くと、ドアには【不在中】の札がかかっており、札はそのままにして保健室の中に入った。