もっと、キミと
「白鳥、大体お前は」
……あれ。
この先も言葉が続くはずなのに、途端に聞こえなくなった。
それどころか、耳はじんわりと温かい物で包まれているような感覚になった。
強くつむっていた目をゆっくりと開けると、目の前には佐倉くんがいた。
というか、ものすごく距離が近い。
(!?)
驚いて離れようとしたが、彼が首を横に振りゆっくりと口を動かした。
(聞・か・な・く・て・い・い)
と、私に分かりやすい口パクで伝えてくれた。
そして、つんつんと間宮先生達の方を指差した。
そちらを向くと、二人は私のことで言い合っていたはずなのに、視線は私達の方に向くことはなく、お互いに睨み合っているものとなった。
今度は、彼が私の肩をトントンと指で叩いた。
振り向くと、ドアの方を指差した。
そして、私に自分で耳を塞ぐように伝えるとこっそりとドアの方に向かった。
数歩進み、私に小さく手招きをした。
ま、まさかーーこの状況で教室を出ようとしてるの?
彼は、ゆっくりと音を立てないようにドアを開けていた。
先生達の方を見ながら歩くと、意外とバレてない。
この状況に、いつまでもいるのが辛い。
彼に続いて、こっそりと教室を出てしまった。