もっと、キミと



「デ、デ……デートって、一体……!」


「白鳥さん、しっ」


口に人差し指を当てて静かにするようにとジェスチャーされる。


……そうだ、よく考えれば授業中。


授業中に教室にいなかったのは、初めてだ。


「他の先生にバレたら、怒られるじゃん。だから、お忍び」


なるほど、と納得しかけた。


しかし、まだ肝心なところに納得がいっていない。


「あ、いや……あの、その……デート、って」


「へぇ、そっちが気になっちゃうんだ」


私の反応を見てクスクスと笑う佐倉くん。


恥ずかしい。


ポッと顔に熱が集まった。


「ぶは、そんな顔を赤くしなくても。ただ学校を案内して欲しいだけだよ」


口ごもってしまった私に「ごめんごめん」と軽く謝る彼。


「案内って……?」


新入生の時に言われたり、後輩に言われるのなら分かるが二年生になった今、そんなことを言われるとは思わなかった。


「僕、同級生のみんなみたいに色んな教室とかに行けるわけじゃないから。教えて欲しいなって」


そうだ。


保健室登校をしている彼が行動するのは、保健室隣の空き教室と屋上だけだ。



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