もっと、キミと



リビングは、美味しそうなお味噌汁と焼き魚の匂いが充満している。


しかし、私が食べているのは半額の割引シールが貼られたロールパン。


母の手料理を朝から食べられるのは、兄だけ。


でも、毎日期待してしまう。


もしかしたら、私の分の朝ごはんがあるかもしれない。


しかし、手間暇かけた朝ごはんは受験が控えている兄だけ。


まぁ、母が働いていた頃は全員菓子パンを食べていたから、私の何かが変わったというわけではない。


ただ、兄だけを特別扱いされると私の存在は一体何なのだろうと考えてしまう。


兄からは八つ当たりの対象とされ、母からも兄妹間の差別を受ける。


そして、父は私達の事に気づいていないだろう。


興味もないと思う。


家に私の居場所なんてないんだと毎朝、改めて実感する。


ロールパン一個を平らげると「ごちそうさま」と言い、カバンを持った。


胃がキリッと痛んだ。


……学校なんて、行きたくない。


でも、それを母に言えばウザがられてしまうだろう。


私は、迷惑をかけないようにしなければいけない。


母は、兄のことで手一杯のはずだから。


毎日、自分にそう言い聞かせているからだろう。


「行ってきます」


と、自然を装って言えるようになった。


「いってらっしゃい」


私の違和感に気付いてもらえるはずもなく、母は私の顔を見ることなく送り出した。


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