もっと、キミと
「母さんは心配性なんだよ。見ての通り、僕はいつもと変わらない。こんなのまでつけて、看護師さん達も大袈裟」
体に繋がっているチューブを持ちながら言った。
こんなことになっていて、心配性とか大袈裟という言葉で片付けられるはずがない。
樹くんの身体は、間違いなく癌に蝕まれているんだ。
「美華ちゃん?」
「……え?」
「深刻な顔しないでよ。ちょっと具合が悪くなっただけ。ほら、温暖化が進んでるから最近暑いし。それで、熱中症みたいになっただけだから」
ニコニコと笑顔を浮かべ、穏やかに話すが彼の言葉をどれだけ並べられても、それは私に気を遣っているとしか思えなかった。
「でも、今日……授業をしないで、樹くんのとこに行くって……それって、樹くんの容態が変わったからじゃないの……?」
「……はは。そんなわけないじゃん」
乾いた笑いだった。
まるで、図星をつかれて誤魔化そうとしているかのように。
……嘘だ。
「僕の余命は一年。来年にはこの世にいないと思うけど、今年はまだ生きるつもりだから」
へらっと笑っているけれど、どうしてそんな顔ができるの。