もっと、キミと


私も、死を覚悟したことがある。


あの日、屋上で樹くんに止められていなければ、確実に失われていた。


ただ、今となっては本当に飛び降りる勇気なんてあったのかと自分でも思う。


自殺して、リセットしようと考えるのは簡単。


それを実現できるかの行動力は別である。


「きっと、すぐ退院だよ。そしたら、僕のことを迎えに来て欲しいな」


「っ、もちろん! すぐ来るからっ」


「はは、嬉しいなぁ。夏休みに入る前に、退院したいな。夏休みになったら、学校がある時みたいにすぐ美華ちゃんには会えないから」


笑っているけれど、悲しそうな目をしている彼にぶんぶんと勢いよく首を横に振った。


「そ、そんなことないよ……!」


「……え?」


バクバクと心拍が速くなり、言葉を発しようとすれば口から心臓が飛び出すんじゃないかと不安になった。


「わ……私の時間を樹くんにあげたいから。樹くんの邪魔にならないのなら、毎日だって……!」


迷惑がられてしまうのではないかという不安は、言った後に襲って来た。


しかし、後悔が後からやって来ても、時すでに遅かった。


言い終えてから恥ずかしさがぐわっと襲いかかって来て、口を両手で塞いだ。


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