もっと、キミと
特別な夏祭り
☆☆☆
一週間後、夏祭り当日。
午後五時過ぎ。
空はオレンジ色に染まり、バスの外はいつも閑散とした道が続いているだけだが、今日は人だかりができている。
夏祭りがあるから、バスの中は浴衣を着た男女のカップルが多い。
私も、浴衣を着ている。
白を基調とした生地に朝顔の模様が入っている浴衣。
髪も浴衣に似合うように動画サイトで、やり方を見ながら結った。
普段、髪をアレンジすることがないから、慣れない作業で腕をずっと上げた状態で色々やっていたから、パンパン。
学校では禁止されているメイクにも挑戦した。
これも、慣れてないからうっすらとしかできなかったけど。
浴衣を着た人達の目的地はみんな同じ。
でも、私はみんなが降りる目的地の三つ前の病院前のバス停で降りた。
そして、いつも通り五○三号室へやって来ると、大きく深呼吸をしてから扉をノックした。
「はーい?」
と、いつもの明るい声が聞こえてホッと安堵して病室へ入った。
「お、お待たせ……」
「わっ。美華ちゃん浴衣! すごく似合ってる。可愛い」
出会って早々、歯が浮くようなことを言う樹くん。
樹くんだって、甚平を着てる。
制服姿もかっこいいけど、甚平姿はもっと……。