もっと、キミと

手紙



☆☆☆


夏は日が昇るのが早い。


「ん……」


カーテンの隙間から差し込む光で目が覚め、声が漏れた。


椅子に座り、ベッドに伏せて眠っていたから体が痛い。


伸びをして寝てる樹くんを見ると、思わず笑みが溢れた。


昨日から彼氏になった。


まさか、付き合ったその日に一夜を共にするなんて、思いもしなかったけれど。


慣れない体制で寝たから、私はすぐに起きたけれど彼はピクリとも動かず、眠っている。


よっぽど、寝つきが良いのだろう。


そんなことを思いながら、ごくりと生唾を飲みながら彼の手に手を伸ばした。


ね、寝てるし……バレなきゃ良いよね?


好きな人には、触れていたい。


一秒でも長く。


そう思い、彼の手をぎゅっと握った。


手を握る瞬間まで、ドキドキしていたが手に触れた瞬間、サァッと血の気が引いた。


彼の手が、冷たい。


人の体温で、これほど冷たい事があるのだろうか。


「樹くん」


彼を呼んだみた。


でも、反応しない。


「樹くん、樹くん……!」


今度は、体を揺らしてみた。


もし、彼がとても深い眠りについていて、私が邪魔をしたのなら何度でも彼に謝る。


きっと、彼はすぐに目を覚ますだろうから。


しかし、私は彼の目を覚まさせる事が出来なかった。



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