もっと、キミと


「……話したい事、たくさんあるわよね」


棺の前から動かないでいると、間宮先生が私の両肩をぎゅっと強く掴んだ。


ハッとして辺りを見渡すと、後ろにはまだたくさん樹くんとお別れの言葉を言いたい人で溢れていた。


後ろの人に順番を譲り、私達は会場を出た。


ーー本当に、彼は。


ぼんやりとそんなことを考えていると、タッタッと後ろから足音が聞こえた。


「白鳥……美華ちゃん?」


「……え?」


名前を呼ばれ振り返ると、私を呼び止めたのは樹くんのお母さん。


目元を真っ赤に腫らし、今にも涙が溢れそうで、目が潤んでる。


お母さんとの初対面は、樹くんの手が冷たくなっていたことに気付いたあの朝。


一夜を共に過ごしたのに、親への挨拶はまだだった。


名前を呼ばれ、抜けた声で返事をしてしまったが慌てて咳払いをした。


「は、はい。そう、ですけど……」


「これ。息子から預かっていたの。亡くなった後、必ず貴女に渡して欲しいって」


そう言ってお母さんが差し出したのは、厚みのある茶封筒。


茶封筒の真ん中には、【白鳥 美華様】と書いてある。


私へ宛てた手紙だ。


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