エリーの純愛~薬草を愛でる令嬢は拗らせた初恋を手放したい~

王妃様への献上品


「お祖母様、お待たせしてごめんなさい」

「エリー、お疲れさま。こちらに座って休んでちょうだい」

 エリーは頷き返事をしながら、ベッドで横向きに寝ているナタリーの寝姿を確認すると、側に控える侍女のステラにタオル地で作ったクッションのような物を手渡した。

「これ作ってみたんだけど、どうかしら? 午後から夕方にかけて体勢を仰向けに変える時に、腰あてとして使ってほしいの。お願いできるかしら?」

「エリーお嬢様、これは柔らかすぎず、硬すぎず、ベッドの上でもずれにくいと思いますよ。昨日いただいた膝の下に置くクッションも良かったですし、早速今日から使ってみましょう」

「二人とも……有難いけど、しばらく横になっていれば痛みも治まるだろうから、そんなに手間暇かけなくても大丈夫よ」

「大奥様、無理はいけません! しっかり治さないと、寒い季節にはもっとおつらくなりますよ」

「お祖母様、腰痛を甘く見てはいけないわ。ここは、ステラの言うことを聞いて、しっかり養生してね」

「ふふっ わかったわ」

 二人の熱意に折れたナタリーは、素直に聞き入れることにしたようだ。そんなナタリーを見て、エリーとステラも胸を撫でおろした。

「そういえば、ダニエルはどうしたのかしら?」

「ダニエルは厨房に行っているわ。実は三人に相談したいことがあって、昼食を一緒にとりたいとお願いしたの。勝手にごめんなさい」

「それは良いのよ。それなら、ダニエルが来たら話を聞きましょう」

 その後、部屋へやって来たダニエルを交えて四人は食事を始めた。

「それで相談というのは、王妃様への献上品についてなの。もらった資料には、詳しく書かれてはいなかったけど、今年は何を献上するのかしら?」

「それが、まだ決めかねているのです」

「この時期に決まっていないなんて、珍しいわね」

 ダニエルに問いかけるも、返された言葉に少し驚いた様子のエリー。

「昨年は色々なことがあったでしょう? 王妃様は毎日執務に追われて、大変お疲れのようだとテレーズさんからお手紙をもらったのよ」

「お母様から……わざわざ伝えてくるということは、何かあったのかしら」 

「いつもお渡していたラベンダーの化粧品だと、刺激が強いかもしれないと心配してくれたのね。でも、王妃様はラベンダーをとても気に入ってくださっているから、収穫したラベンダーで何かできないかと皆で考えていたところなのよ」

「そうだったの。王妃様は気管支が弱いとお聞きしたことがあるわ。もしかして、喘息の症状が出たということもありえるのかしら」

「手紙に詳しいことは書かれていなかったけど、もし本当に喘息を抱えているのなら、献上できるものは限られてくるわね」

「そうね。薬草園に蜜ろうが沢山あったから、乾燥ラベンダーを入れてキャンドルを作ろうかと思ったけど、キャンドルもやめておいた方が良いわよね」
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