エリーの純愛~薬草を愛でる令嬢は拗らせた初恋を手放したい~
 そんな二人の横では、ナタリーとダニエルが献上品を運ぶ役目をどうするか話し合っていた。

「大奥様はご無理をされないほうがよろしいかと」

「そうね。この身体で私が出向いて、ご迷惑をおかけするわけにはいかないわ。でも、式典があるわけでもないから、当主自らが出向くというわけにもいかないわよね」

「それでは、奥様にご協力をお願いするのはいかがでしょうか」

「そうね。テレーズさんなら安心だわ。そうしましょう」

 途中から、二人の会話を聞いていたエリーにナタリーが説明をした。

「エリー、いつもは私が王妃様のもとへ伺うのだけれど、今回はテレーズさんにお願いすることにしたの。王妃様の体調面も心配だから、献上品について詳しく説明できるエリーにも同行をお願いしたいの。詳細はテレーズさんに送る手紙に記すけど、エリーからも王妃様に詳しい説明をお願いできるかしら」

「……私が……、王宮に?」

「エリー?」

 言葉を詰まらせ俯くエリーを心配したのか、ナタリーはダニエルとステラに部屋を出てもらうことにしたようだ。
 二人が部屋から退出すると、ナタリーはエリーをソファーに座らせて、自分もその隣に腰掛けた。

「……ごめんなさい。
お祖母さまが、体調を崩したという報せがきたとき、早く領地に行きたい……お祖母様のそばにいたいと思ったわ。でも、それだけじゃないの……。私、王都にいるのがつらくて逃げてきたの……」

「……そう」

「彼の…姿を見かけるだけで苦しくて、誰かと一緒にいるところを見たくなくて……。
子供の頃から、あきらめないといけないって……分かっていたのに」

「エリーの王子様ね」

「——!! お祖母さま……どうして?」


< 9 / 9 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:0

この作品の感想を3つまで選択できます。

この作家の他の作品

ルイーズの献身~世話焼き令嬢は婚約者に見切りをつけて完璧侍女を目指します!~

総文字数/142,556

ファンタジー187ページ

第5回ベリーズカフェファンタジー小説大賞エントリー中
表紙を見る

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品をシェア

pagetop