スパダリ救急救命士は、ストーカー被害にあった雑誌記者を溺愛して離さない~必ず君を助けるから。一生守るから俺の隣にいろ~

5.デート

 朝食のあとスマホを買いに行こうと言われた瑠花はようやく服がないことに気がついた。
 昨日着ていた服は、雨上がりの地面に座り込んだせいでドロドロだった。
 ブラウスも泥が跳ねていて着るのは少し恥ずかしい。

「とりあえず、このズボンが紐でウエストを絞れるから……すぐに店で買って着替えよう」
「お借りします」
 と思ったが、瑠花は足の長さの違いを思い知った。

 足首にゴムが入っていて床についてしまうことはないけれど、こんなに布が足首に溜まってしまうのはショックかもしれない。
 そしてウエストの紐は片手では無理だった。
 恥ずかしすぎるが蓮に手伝ってもらい、紐を縛ってもらう。

 片手だとメイクは大変なのだと初めて知った。
 髪は小さな櫛でとくだけ。

 蓮が湿布を貼り替え、また綺麗に包帯を巻いてくれる。
 昨日青あざになると教えてもらっていたおかげで、手首を見ても驚かずにすんだ。

 手を繋いで駅前の商業施設へ行くなんて、デートみたいでは?

「こっちの方が似合いそうだ」
 シンプルなシャツとズボンを選んでいた瑠花の前に清楚なワンピースが差し出される。
 スカート部分の布は贅沢にたくさん使われ、アシンメトリーなドレープが可愛い。

「そ、そんな可愛いのは」
 女の子らしい服は似合わないと否定する瑠花にワンピースを当てながら「可愛いと思うけど?」なんて素で言われたら、試着しないわけにはいかない。
 身体の左側のファスナーをがんばって右手で上げると、ハイウエストでスタイルがよく見えるワンピースだとようやく気が付いた。
 おずおずと試着室から出ると、すぐに「似合うよ」と言うなんてズルい手口だ。

「じゃあこれに」
 普段自分では絶対に選ばない服だが、このデートのような今日のお出かけ記念なら良いかと思った瑠花は、思い切ってこの服を買うことにした。

「靴も似合うのを頼む」
 蓮が店員に軽く声かけすると、何種類かの靴が目の前に並ぶ。
「ヒールは?」
「あまりない方が……」
「じゃあ、これはどうだ?」
 蓮が選んだ靴は可愛いけれど使い勝手が良さそうな靴。
 センス良すぎでは?

「これにします」
 履き心地もいいし、歩きやすそう。
「このまま着ていく」
「はい。では着てこられた服と靴をお包みしますね」
「支払いはこれで」
 当然のようにクレジットカードを店員に渡す蓮に瑠花は焦った。
< 11 / 32 >

この作品をシェア

pagetop