スパダリ救急救命士は、ストーカー被害にあった雑誌記者を溺愛して離さない~必ず君を助けるから。一生守るから俺の隣にいろ~
 翌朝、瑠花は身支度を整え、昨日下ごしらえした材料と荷物を持って蓮のマンションへ。
 9時頃に帰るとメッセージをくれた蓮に温かい料理を出せるように、時計を見ながら瑠花は支度を始めた。
 ガチャと鳴った鍵の音で瑠花は慌てて玄関へ。

「おかえりなさい」
 ちょっと新婚みたいで恥ずかしいと思ったが、赤くなった蓮の顔を見た瞬間、それが自分だけの気持ちではないことを知った。

「幸せすぎる」
「……私も」
 付き合い始めの初々しいこの時期は無敵だ。
 会えただけで幸せで、どんな些細なことも楽しく感じてしまう。
 蓮が作ったご飯の方が絶対においしいのに、「おいしいよ」と言ってくれたり、残さず綺麗に食べてくれたり。
 コーヒーよりカフェオレの方が好きだと言う共通点が見つかったり、テレビを見ながら同じタイミングで笑えるだけで嬉しすぎる。

「あ、また電話……」
 瑠花はスマホを確認し、昨日の夕方かかってきた番号と同じだと気づく。
 蓮は自分のスマホの検索画面にその番号を入力した。

「……その番号、警察署だ」
「えっ?」
 瑠花は慌てて通話ボタンを押す。
 電話の相手は蓮が言った通り、この地域の警察署員だった。

『先日、暴漢の容疑で拘留されていた男の釈放が決まりましたので、念のため注意していただきたくて電話しました』
「……釈放?」
 瑠花は電話をスピーカーに変更し、蓮にも聞こえるようにする。

「なぜもう釈放されるのですか?」
『あ、調書に書かれていた、捕まえた……えっと、三条さん?』
「そうです」
『今回は未遂ということで、罰金で処理されてしまって』
「されてしまったとは?」
『あ、いや、失言でしたな』
 少し年配の男性の声の警察官は言葉を濁したが、蓮はこの少ない会話から何かを察したようだった。
 眉間に皺をよせ、少し不機嫌そうだ。

「釈放はいつですか?」
『今日の夕方です』
「わかりました。気をつけます」
 蓮は電話をかけてきた警察官の連絡先と名前をメモすると、瑠花のスマホの通話を切った。

「瑠花、今のマンションって引っ越せない理由があるか?」
「特にはなにも。家賃が安いけれど管理人さんがいたから選んだだけで」
「引っ越そう」
「えぇっ?」
「この駅はダメだ。暴漢犯の松岡虎二郎に待ち伏せされるかもしれない」
 蓮の恐ろしい発言に、瑠花の腕に鳥肌が立った。
< 19 / 38 >

この作品をシェア

pagetop