スパダリ救急救命士は、ストーカー被害にあった雑誌記者を溺愛して離さない~必ず君を助けるから。一生守るから俺の隣にいろ~
 連れて行かれたマンションは、確かにさっき蓮が送って来てくれた地図どおりの場所。
 部屋の写真も間違いない。

 でも――。

「こんな高級マンションだなんて聞いてません~」
 気のせいでなければここは駅直結の分譲マンションではないだろうか?
 セキュリティは問題なさそうだけれど、とても家賃を払えそうにない。

「あの、凛さん、本当にここ……」
「私たちの部屋はこっちよ」
「えぇっ? お隣さん?」
「なにかあったらすぐに来ればいい」
「安心でしょ?」
 夜中でも遠慮するなと言ってくれる正臣とウィンクする凛を横目に、瑠花は部屋の入口を交互に見る。

「私は弁護士、正臣は警視だから」
「えぇっ」
 安心してと言われた瑠花は、ハイスペックな夫婦に絶句してしまった。
 正臣が荷物を車から玄関まで運び、瑠花と凛は部屋まで運ぶ。
 荷物を下ろし終わると、正臣はすぐに蓮のマンションへ行ってしまった。

「昔ね、こっちが自宅で、私が住んでいる方が弁護士事務所だったのよ」
 今、ここの名義はそれぞれ蓮と凛の名義に変わっているのだと凛は瑠花に教えてくれた。

「ここには住みたくないって出て行った蓮が戻ってくるなんてね」
 事情はどうあれ嬉しいわと振り向いた凛は、少し寂しそうだった。
 自宅だったと言われたがこの部屋には何もなかった。
 家具ひとつなく、あるのは窓にかかっている分厚いカーテンだけ。

「カーテンも新しくしましょ! 家具の配置も全部瑠花ちゃんの好きにして」
「私が決めていいんですか?」
「できるだけ明るい家にして欲しいの」
 別の家だと思うくらいにして欲しいと言われた瑠花は、蓮にとってこの家はあまり居心地が良くないことに気がついたが、理由を尋ねることはできなかった。

 瑠花が床拭きや窓拭きをしていると、蓮と正臣が家具家電を運び込んでくる。
 今日引っ越すと決めたはずなのに、もう電気や水道も使えるようにしてくれた。
 最低限の荷物しかない広々とした部屋には似合わない大きなクマのぬいぐるみ。

「家具は前のマンションのものなのに、二人の荷物があって不思議だな」
 持ってきた圧力鍋の中に肉を入れながら蓮が笑う。

「私の本、ここの本棚に入れてもいい?」
「好きな場所に置けばいい。瑠花の家なんだから」
 そんなふうに言われたら照れるに決まってるでしょう?

 瑠花は段ボールから本を取り出し、大きさ別に棚に置いていく。
 ふと目に入った蓮が持ってきた雑誌に、瑠花の手が止まった。 
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