スパダリ救急救命士は、ストーカー被害にあった雑誌記者を溺愛して離さない~必ず君を助けるから。一生守るから俺の隣にいろ~
 薄暗い店内は半個室。
 おしゃれな布で仕切られているが人通りはわかる雰囲気で、U字のソファー席は相手の顔がよく見える。

「あ、1人遅れてくるから先に始めようか」
 正直、合コンなんて騒げればOKみたいな雰囲気を想像していたが、お相手が公務員なだけあって真面目なのかもしれない。
 お酒も豊富、料理もおいしい。
 芽依も後輩たちも楽しそうだ。
 瑠花はツヤツヤのサーモンを口に入れると、つい先ほど運ばれてきたばかりの地酒を飲んだ。

「るかちゃん、それ何?」
「酔鯨です」
「すいげい?」
「あ、土佐の地酒って書いてありました」
「へぇ。お酒イケる口なんだ」
 いいね、と声をかけてくれたこの男性の名前はなんだっけ?

「ちょっと頂戴」
 返事も聞かずに瑠花の飲みかけのお酒を飲んでしまう男性に瑠花は気まずい顔で微笑んだ。

「わお、辛口! るかちゃんお酒強いんだ」
「ねぇ~、湊人さぁん。飲みやすいお酒教えて~」
「香菜ちゃんはフルーツ系がいいかな。このオレンジの……」
 メニューを見ながら楽しそうな後輩の香菜と湊人と呼ばれた男性を横目に、瑠花は目の前の唐揚げを頬張る。
 やわらかくてジューシーな唐揚げにもさっきのお酒は合いそうだと、空っぽになったグラスを見ながら瑠花は肩をすくめた。

「ごめん、遅くなった」
 おしゃれな布がふわっと動き、入ってきたのは背が高い黒髪の男性だった。
 ラフな服装を見る限り、この人も人数合わせの参加だろうか?
 たくまして、顔も整っていて、合コンなんて来なくてもモテそうだけれど。

「おつかれー、蓮。遅かったね」
「これでもだいぶ急いだ」
「急に仕事になったんだっけ。来られてよかったよ」
 メニューを渡されながら、少し汗ばんだ髪をかき上げる男性の顔に見覚えがあった瑠花は、まじまじと男性の顔を眺めてしまった。

 おばあちゃんを助けてくれた救急救命士さん……?
 違う?
 似ているだけ?
 そんな偶然あるはずないか。
 見つめすぎたのか、男性とうっかり目が合ってしまった瑠花は慌てて水を飲んだ。
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