スパダリ救急救命士は、ストーカー被害にあった雑誌記者を溺愛して離さない~必ず君を助けるから。一生守るから俺の隣にいろ~
「そんなに怯えないでよ」
 マンションのエントランスに『不審者注意』って張り紙があったけれど、まさか自分が被害に遭うなんて。
 ゴミ捨ての時に、気をつけてねって管理人さんに言われたけれど、聞き流していた。

「おうちどこ?」
 イヤだ。絶対に教えたくない。
 瑠花は首を横に振った。
 手に持っていたスマホが鳴った瞬間、瑠花は通話ボタンを押す。

「コンビニ……あっ!」
 スマホを男に奪い取られた瑠花は、その場に尻餅をついた。
 今の電話が誰だったかわからない。
 着信の名前を見る前に出てしまったから。
 あぁ、日本酒なんて飲むんじゃなかった。
 飲んで走ったからもう動けない。

「さっきの彼から電話かな?」
「わ、わからな……」
 震えながら見上げる瑠花の姿に、男は舌なめずりをした。

「すっげぇ、そそる」
 男は瑠花のスマホの電源を落とし自分の薄い春物コートのポケットに突っ込むと、瑠花の腕をガッチリつかんだ。

「ねぇ、立って。この辺の公園ってどこ?」
 場所わかる? と男は瑠花を引っ張り上げようとする。

「い、いや……」
「公園は嫌なの? じゃ、おねーさんのおうちでしよっか」
 しようって何を?
 なんで?

 どうしよう、気持ちが悪い。
 見知らぬ男に触れられているのも嫌だけれど、お酒のせいで地球が回っている。
 走ったせいで、いっきに酔いが回ったみたいだ。

「……気持ち、悪……」
「はぁ? 俺のこと気持ち悪いって言ったのかよ!」
 しまった! 怒らせた!
 瑠花の腕をパッと離し、手を振り上げる男の姿に、瑠花は震えながら頭を抱えてギュッと目を瞑ることしかできなかった。
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