スパダリ救急救命士は、ストーカー被害にあった雑誌記者を溺愛して離さない~必ず君を助けるから。一生守るから俺の隣にいろ~
「は、離せ!」
「大丈夫か!」
 男の声に驚いた瑠花が顔を上げると、男の腕を背中側で捻り上げる蓮と、抵抗する男の姿が見えた。

「蓮さ……ん?」
 さっきの電話、蓮さんだったんだ……。
 瑠花の目にジワッと涙が溜まる。

 助けに来てくれたんだ。
 男よりも蓮の方が体格がよく、あっという間に男を地面に押し付けた蓮は、スマホで警察に場所と状況を連絡する。

「痛い、痛い、痛いって!」
「警察が来るまで大人しくしろ!」
 男から瑠花が見えないような向きで押さえつけていてくれる蓮のさりげない優しさが伝わってくる。
 蓮の大きな背中を見ながら、瑠花は止まらない涙をハンドタオルで押さえた。

 交番から駆けつけた警察官に男を引き渡し、調書のために蓮と瑠花は交番へ。
 男のポケットからスマホを返してもらったが、画面はバリバリに割れていた。
 左手首がズキズキと痛いけれど、尻餅をついた時に捻ったのかもしれない。
 お尻も痛くて、交番の椅子は結構ツラかった。

 ようやく交番から出られたのは深夜0時過ぎ。
 ひんやりとした空気のおかげか瑠花の酔いはもう醒めていた。

「蓮さん、ありがとうございました」
「スマホ、悪かった」
 犯人を地面に倒した時に割れてしまったのだろうと謝罪する蓮に、瑠花は首を横に振った。

「蓮さんが助けに来てくれなかったら今頃……」
 想像しただけでブルッと身体が震えてしまう。

「明日、休みを取ったから一緒に買いに行こう」
「い、いえ。そこまでお世話になるわけには」
「俺のマンションへ行こう」
 一人にはできないと蓮は瑠花の手を摑まえる。
 大丈夫だと答えるべきなのに、なぜか瑠花は蓮の手を振りほどくことができなかった。

 蓮のマンションは駅からすぐ。
 あのメッセージを送ってくれた時には蓮はもうマンションについていたのだろう。
 書きかけの変なメッセージを見て電話をくれて、コンビニという言葉だけで助けに来てくれたのだ。

「服、俺のだけれど。シャワーはそこ」
 黒い長袖Tシャツにハーフパンツを差し出された瑠花の戸惑った姿を見た蓮は、真っ赤になりながら「変な意味じゃなくて」と必死で否定した。
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