スパダリ救急救命士は、ストーカー被害にあった雑誌記者を溺愛して離さない~必ず君を助けるから。一生守るから俺の隣にいろ~

4.彼のマンション

「お、お借りしますっ」
 瑠花は服を受け取りシャワーへ。

「……痛っ」
 汚れたズボンとブラウスを脱ごうと左手を動かすと、ズキズキする痛みはさらに増した。
「腫れている?」
 さっきまではなんともなかったのに。
 左手がうまく使えないので、髪を洗うのは大変だった。
 でもようやく汚れも落ち、心も身体もスッキリする。

「おっきい……3L?」
 蓮のTシャツはぶかぶかで袖も余り、まるでお父さんの服を着てしまった子供のようだった。
「……ドライヤーは……?」
 すっきり片付いた洗面にドライヤーは見えない。
 引き出しを勝手に開けるのも気が引けるし、男性だとそもそもドライヤーなんて持っていないのかもしれないと思った瑠花は、首にタオルを巻いてそのままシャワーから出た。

「手首、見せて」
 蓮はタオルに巻いたアイスパックを瑠花の手首にそっと巻き付ける。
 巻き付けた手首を下から支えながら蓮は瑠花をソファーへ座らせた。

 テーブルの上には当然のように準備された湿布と包帯。
 手首が痛いこと、気づいていたの?
 キッチンからカランと良い音がしたと思ったら冷たい麦茶が目の前に出される。

 蓮はそのまま座らずに今度はシャワーへ行き、ドライヤーを手にして戻ってきた。
 あ、ドライヤーはどこかにあったんだ。

「ありがとうございます」
 受け取ろうと思ったのに、なぜか蓮がコンセントにドライヤーを差し、瑠花の髪を乾かし始める。
 これはいったいどういうこと?
 手が痛いから気を遣ってくれてる?

「あの、自分で」
「手は使わない方がいい。明日にはたぶん青あざになっていると思う」
 おそらく捻挫で、内出血もしているだろうと言いながら蓮はそのまま瑠花の髪を乾かしてくれた。
 湿布を貼り、板のようなものを挟みながら手際よく包帯を巻いてくれる。
 さすが救急救命士!

「ありがとうございます」
「いや、夜遅いのにマンションまで送らなかった俺のせいだ」
 すまなかったと謝罪された瑠花は首を横に振った。
 全然、蓮さんのせいじゃないのに……。

「そこのベッドを使ってくれ。シーツはさっき変えたけれど、布団は変えられなくてすまない」
「え、でも蓮さんが」
「ソファーで寝るから大丈夫だ。シャワーを浴びてくるから先に寝ていてくれ」
 蓮は瑠花の返事を聞かずにシャワーへ行ってしまう。

「ベッドまで占領するの申し訳ないよね……」
 助けてもらって、包帯を巻いてもらって、ベッドまでは流石にね。
 さっきまでズキズキと痛んだ手首があまり痛くない。
 瑠花は綺麗に巻かれた包帯にそっと触れながら「すごいな」とつぶやいた。
< 8 / 32 >

この作品をシェア

pagetop