うちのペットのマルとモカ
 



 次の日の朝。

 朝日に薄目を開けて、ひなたが昨日の事は夢かと考えていると。


「こら遅い!」


 エプロンを付けたマルが、ドカドカと部屋に入って来て。

 寝ぼけ眼で起き上がったひなたの頭をコツンと打った。


  
「な、何」

「し・つ・け。される側になったね。」



 マルはそう言うとしかめっ面で持っていたおたまを振り上げた。


「早く起きる。さっさと。ほら。」



 起き上がってリビングに行くとモカがTVゲームをしていた。



「今日徹夜して寝てない」

「猫なのに?」

「うっざ。もう猫じゃない。」



 モカが続けた。



「猫って言われるの、正直嫌」

「何で?」

「無様だな。女みたいだからだろ。」



 マルがトースターを使いながら口を挟んだ。



「お前には言ってない。犬だって似たようなもんだろ。」

「犬はどちらかといえば男性性の象徴だ。」



 マルがきっぱり言った。



「猫とは大違い。」

「僕はひなたに人じゃないと思われるのが嫌なんだ。」



 モカが言い返した。



「因縁付けてくんなら、容赦しない」

「引っ掻くってか?」

「お前だって元は噛みつくとかしかなかっただろ。」



 モカが心底鬱陶しそうにため息を付いた。


 
「今日は着替えて、ひなたの学校に転入」

「えええっ学校来るの?」

「来ちゃ悪い?」



 マルがにっこり微笑んだ。ブラックな笑み。


 
「学校に僕は一人大嫌いな奴が居るんだ。」

「協定」



 モカが口を挟んだ。


「僕だってあいつは嫌いだ。二人でぶちのめそうぜ。」


 ひなたは心当たりがないまま、うーんと首を傾げた。

 
 


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