運命かもしれない。

3:森谷さんかもしれない。〜加藤side〜

塾の帰り。駅のホームは帰宅途中のサラリーマンや外国人観光客、自分と同じ学生で溢れていた。


この時間帯の落ち着いた駅の雰囲気が、俺は割と気に入っている。


「そういえば、明日は親が出張だったはず」


弁当はないから買うとすれば学食か、、、。


そう思うと胃がギュッと縮むような感覚に襲われた。


ちらつく人の影。むせかえるような香水の匂い。


俺はハッとして、すぐに頭を振る。


「コンビニで買って行くか」


そう言って俺は駅の近くのコンビニに寄った。


コンビニに入った瞬間、俺は『ん?』と思った。


『森谷さん、なのか?』


目の前には教室の隣の席に座る、明るい同級生の姿があった。
いつものようなメイクもしていないし、いつもまとめていた赤茶っぽい髪も、今は下ろしている。


なんと言うか___


「・・わいい」

「あれ、加藤くん?」


急に彼女が自分の名前を呼んだから、今何を思っていたのかすぐ忘れてしまった。


「え!ちょっと待って、、、!」

「ど、どうしたの?」


彼女はガバッと自分の顔を手で覆い隠した。


「その、今すっぴんだから、、、」


その言葉に、つい俺は頬を緩める。


「そんなこと、別に気にしないよ」

「いやだって、、、。・・・な人にはよくみえたいじゃん」

「え、なんて言った?」


森谷さんはぼそっと何かを呟いたけど、なんと言ったかはわからなかった。


「ううん!な、なんでもない!それより、加藤くんは何してたの?」

「俺は塾から帰ってたとこ。明日のお昼とか買っておこうと思って」

「ふむふむ、、、習い事はピアノの他に塾も、っと」

「、、、森谷さん?」

「あっいや、なんでもない!」


森谷さんはブンブンと千切れんばかりに首を振った。


「そう言えば、森谷さんは何してたの?」

「わたし?あ、えっと、アイス選んでた」

「そうなの?」

「そうなの!家族の中でじゃんけんして負けた人が買いに行くって言う話で、見事に負けちゃった、、、。てか、コンビニって美味しいくせに種類多くてほんと悩む〜!」

「、、、ふは」


アイスを真剣に悩むその姿が、なぜかとても愛くるしくみえて、笑ってしまう。


「もう!笑わないでよー」

「ごめんごめん。俺はこのアイスが好きだな」


そう言って俺は冷凍フルーツがたくさん乗った、お気に入りのシャーベットを指差した。


「へぇ!私こう言うの食べないから新鮮かも」

「あ、いや。別に食べなくてもいいんだよ?」

「なーに言ってんの!加藤くんがどんなアイス食べるか、気になんじゃん」


うっしっし、と変な笑い方で森谷さんは笑った。


ギュンッ


は、、、?なんかすごい音聞こえた。なんだ、どこから?


「ありがと」

「?うん!」

「じゃあまた、学校で」

「またねーっ!」


はぁ、はぁ、はぁ!
走っても走っても治らないこの感覚はなんだ。


ひとしきり走ってあることに気づいた。


「あ、、、。ご飯買うの忘れた」


〜加藤side end〜
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