花系男子はアナタっ子
*花系男子と愛情*

全然足りない

私はすぐに蒼葉に連れられ、部屋に向かった。

蒼葉くんが閉めずに出てきたままなのか、扉が開いていたから、走った勢いのままに中に入る。


「千莉くん!夢莉くん!」

二組並んで敷かれた布団に、未だ横になっている双子と、その隣に座る橙果くん。

スリッパを放り、駆け寄った。

「昨日の夜、寝てる間は大丈夫だったと思うけど……今朝なかなか起きないと思ったら……」

橙果くんは軽く説明してくれたから、それを聞いて二人に目をやれば、呼吸は普通なのに、苦しそうに顔を歪めていて……

『すみれ……』

二人とも私に気付き、薄く目を開けて手を伸ばしてきたから、ぎゅっと握りより近くに寄った。

「大丈夫?」


「へへっ……ちょっと、苦しいだけ。そんな泣きそうな顔、しないでよ」

「うん、すみれが来てくれて、少しよくなった気がするから……」

夢莉くんも千莉くんも笑顔を作ってくれるけど、顔色が全然よくない。

「今、他の子が保健の先生呼びに行ってるけどやはりこれは……蒼葉くん」

橙果くんが双子の横に立つ蒼葉くんを見上げると、蒼葉くんは確信したように頷いた。

「ああ、これは大人が来たってなんの意味もねぇ」
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