「側についていて」
出会い?
突然のことで、俺は授業中だと言うのに大きな声をあげてしまって、周りのクラスメートを驚かせた。
教壇では、教師までポカンと口をあけていた。
まあこっちは、俺が謝罪の言葉を吐いたから、そちらの方に唖然としたんだろう。
そう、俺はハッキリ言って不真面目だし、授業中なんかほとんど寝てる。
突然「うわ!!」っと叫んで椅子から立ち上がり、教室が一瞬ざわついた後で、夢か、と胸を撫で下ろすと、頭を下げて、すんません、と呟いて席についた。
再び教師の子守唄が流れはじめ、俺は間近で声を拾ったと感じた右耳をおさえる。
幻聴の経験はなかったけれど、それかもしれないと言い聞かせ、今度は机に伏せることはやめて頬杖をついた。
窓からそよそよと入り込む生ぬるい風に、長めの金髪の前髪が揺れて額をくすぐる。
うつらうつらとしはじめて、ゆっくりとまぶたを閉じた。
「寝てはダメです。今やっているところ、テストに出ますよ」
「っ…!」
ガクン、と手のひらから頭がおっこちたけど、なんとか首の筋肉を駆使してその場にとどまる。
もちろん目をあけたし、2度めだったからか、声をもらすことも耐えられた。
俺の席は窓際の一番後ろで、一ヶ月前にこの中学に入学して、はじめてここに座った時から、隣には机は存在していなかった。
当たり前だけれど、俺の右側には誰もいない。
さっきだって今だって、誰もいない。
いい加減にしろよ、安眠させろ。