「側についていて」

 いいから大人しくしていろ、と屋上で散々言い聞かせたにも関わらず、六限目の授業を受ける為に教室へ戻る途中、廊下を歩く俺の右肩からは鼻歌が聞こえ続けていた。

 「私は高校二年生なんです。木暮さんに勉強を教えることが出来ます!テストの点数が上がれば、ご両親も喜ぶのではないでしょうか?」
 「いや、健康ならそれでいいって言われてるから。その大事な健康がまさに今、アンタの存在のせいで脅かされてんだけどね」
 「ケガですか?腕、動きますよね!折れたりしていないので安心して下さいね!」
 「…あ、そう。頭の健康のこと言ってんだけどね…」

 授業なんざサボって屋上で昼寝してたっていいんだけど、校則違反の金髪の髪に、良い成績を取ろうとも考えちゃいない態度で、教師やクラスメートにもすこぶる評判の悪い自分に出来る最低限のことだけはなんとかこなそうと決めていた。

 女手一つで俺をここまで養って来てくれた母親が、これ以上学校から呼び出されないようにするには、せめて喧嘩をしないことと授業には出ること、この二つは必要不可欠だ。

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