「側についていて」
「…誰だよ、静かにしろよ、沈めるぞ」
「う、うっ…、私を沈めると貴方も沈むことになります…、勉強、しましょう?」
「どこにいんの。なに、透明なわけ。幽霊?昼間なんだけど」
「貴方のお側に。幽霊ではありません。とりあえず、教科書だけでも出しましょう。28ページを開いて下さい。今日は、そこまで出来たら静かにしますから」
「マジかよ…、静かになんの、本当に。…あ、教科書持って来てねえわ」
「…では、板書をしましょう」
すっげえ面倒くせえんだけど、このオバケ。
俺は基本的に何もしたくねえんだよ。
ノート、ノートは確か机に入れっぱなしだったからあったはずだ。
ペンケースなんざねえから、ああ、コレでいっか。
書ければいいんだろ、字が書ければ。
「…書きにっく」
「…何故、チャコペンなんですか。鉛筆は」
「家庭科の時に配られて、適当にしまってあったやつだけど」
「…前の席の人に借りたらいかがでしょうか」
「ひっくり返るわ。俺が勉強するから鉛筆貸してなんて言ったら」
「…帰りに文房具屋に寄りましょう。筆記用具、家にもないのでしょう」
「俺の予定を勝手に決めるな」
「…大声で喘ぎますよ。それはもうAV女優並みに」
「なんなの??誰なわけ??寝ていい??」
「ふう、緊張しますね。やったことがないので。…えっと、あーあーあー、声、ヨシ、では」
「わかったよ!!行けばいいんだろ!!…あ、すんません。寝ぼけてました」
しょうもない押し問答の末、再び俺が大声を上げてしまって、クラス中に謝るはめになった。
俺のことを毛嫌いしているであろう数学の教師まで、多少心配そうに眉根を寄せて首を傾げている。