「側についていて」
そうだよな、どう考えても様子がおかしいもんな。
俺自身だってそう思うし、このうざったいオバケをなんとか始末して、今まで通り大人しく夢の世界に旅立ちたい。
一体どこで、俺の右耳に向かって喋りかけてんだ?
そうは思うけれど、顔の右側をパタパタと仰いでもぶつかるものも、触れるものも、ただの空気、そこにある空間だけだ。
「木暮、…具合が悪いなら保健室行け。他の生徒の邪魔になる」
背が低くて顔がでかい、体も丸くてアニメキャラ等身なのに厳つい目と小さいおちょぼ口、なかなかにエキセントリックな見た目の数学担当の教師が、心配の欠片も滲んでいない言葉で俺の求めていたシチュエーションを用意してくれた。
これからはこの前田のこと、金魚のヤクザくらいには愛らしく思えるかもしんないわ。