「側についていて」

 …うん、声はしないな。
 なんだったんだ、もうボケたのかよ、16なんだけど俺、もう人生終わるの。
 …まー、いっか、それでも。
 大して、思い残すことなんざねえし。
 俺がいなくなれば、母ちゃんだってもう一度くらい結婚出来んじゃないの。

 「こらあ!!煙草吸うような年齢じゃありませんよね!すぐにやめなさい!百害あって一利なしですよ!!」
 「…っ、なに!でっけえよ、声が!!」
 「だって、煙草!!ダメですよ!!」
 「いーんだよ。これ以上背も伸びんだろ」
 「確かにでっかいですよね!見晴らしがいいです。あ、ちょっと、右腕の半袖の裾を、めくってもらえますか?景色が見たいです」
 「はあ…?」

 ポケットから出した煙草をくわえ、ライターで火をつけようとしたまさにその時、あの女の声が今までの比じゃないくらいけたたましく響き渡った。
 今まで押し黙ってたんだから、もうそのまんま一生口開かないで欲しかったんだけど。
 俺の平穏な人生を返せよ、この先の人生ずっと精神科通いかよ。

 …、右腕の、半袖の裾?


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