「側についていて」

妖精、ではない


 妖精かなんかで、すっごく小さくて、この半袖の制服のシャツの腕のところに隠れてた、ってことか?
 襟から顔を出して右耳の前で話しかけてた、ってことだとすれば、風の音や数学教師の声、黒板を滑るチョークの音、それらに掻き消されて周囲の人間には聞こえなかったとしても、あり得なくもない。
 いや待てって、妖精とか、俺の頭がどうにかしちまったことには変わりない。
 結局病院行きってことにしかならねえ。

 とりあえず、着ている制服の半袖のシャツの右の部分を、肩の辺りまでギュっとめくって、首をひねって裾の中を覗き込んだ。

 …こんなとこ、ぶつけたっけ。
 ああ、やったわ、今朝だ今朝。
 でも、その時はこんなに濃いアザにはなってなかった。

 そうだ、確かに俺は、登校中に右肩から少し下辺りの箇所に怪我を負った。



 
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