お利口?不良?ハイスペ御坊ちゃまがご令嬢と熱愛してスパダリになっちゃいました♡

6.会ってない時間も気になってくるのおかしい

「追わせるじゃんかよっ」

 今日は野球部を終えた俺は、真っ直ぐ一人で家に帰って独り言を呟きながら壁当てをしていた。

「持ってるとかって話じゃない。欲しいモノが俺じゃないってそんなの女子がアリかよ」
「ふざけたこと言ってないでご飯にするぞ」

 皆城芳乃が不登校になっちまったことに不貞腐れた俺は、身体が冷える寒空の下が性に合ってる。それを邪魔できたのは、何を言うにしても正しく聴こえる父親だけだった。

「母上、俺のなにがダメか教えてくれないか?」
「律さん、母親にまでそうやっていつも偉そうにしてるとこよ。本当にアナタそっくりね」
「飯が不味くなる。律、どうして自分のことばかり気にする。お前らしくないだろ」
「気になる子ができた。自分のことも気にするよ」

 俺は正直な子だった。嘘だけはついていけないと母親が父親によく言ってたから。その時だけは、よく二人は立場が逆転していた。

「あら、どんな子なの?」
「今は言いたくない子、学校に来てくれないんだよ」
「誰かにイジメられてるのか?それでお前が庇って」
「違うんだよ父上、全部俺が悪いんだ。俺のせいでアイツは…」
「二人とも思い込みが激しいのもよく似てる。たまには一緒にお風呂でも入ってきたら?」
「いや、俺は母さんとがいい。律、お前はもう寝ろ」
「二人みたいになれればと思って寝るよ。酷いけどね、おやすみ」
「あんまりグレないでよ、おやすみなさい」
「俺達の子だ。あんまり心配するな」

 そんな裕福である上に余裕がある家庭の産まれだった俺は、もっと気ままに生きられるとばかり思っていた。

♢♢♢
Yosino

「ほんとあの人どうかしてる」

 ドレッサーの前で座り込んだ私は、鏡を前に不機嫌ばかりを露わにする日が続いていた。

「私のことなんだと思ってるの。ねえ〜ちゃちゃ」
「にゃ〜」

 毛の長い血統書の猫を抱き抱え、そんな私を癒してくれる実家の居心地の良さから解き放ってくれるのは…

「馬鹿馬鹿しい。どこが王子様よ、期待して損することばかり。ほんと大嫌い」

 なんで、律を悪く言うと私の心は傷つくんだろう。そんなことばかりの疑問が増え続ける毎日に私は疲れ切った様に、椅子から本棚に向かって、手が伸びる。

(なんで本を読んでたんだっけ?)

 趣味に集中できない。私は、手に取った一冊の本を眺めると表紙を捲れずにそのまま本棚に戻し、ベッドに仰向けで身を投げ出す。

(するわけないでしょ、あんなやつなんかと)

 身体がずっと火照ってるかのように冷たいモノを求める。
多分それは、私でもあって彼の今の態度。優しくなんかしたくないし、優しくされたくなんかない。それがなんだか一番恐いから。

♢♢♢

「みんなありがとう。色紙なんかよりよっぽどいい」

 催し物のポスターが出来上がった。アイツに宛てたもんだけど、それがアイツと、俺と、此処にいるクラスメイト以外の誰の目にも分からず、町中の人が目に留めてくれると嬉しい俺らしさが上手く表現出来てる筈だと、大量に擦った一枚で涙を拭う。

「演出家かよ、気合い入ってんな」

 カラーコピー代なんて小学生の財布に厳しいのを出してくれたのは、見た目に似つかわず甘い声をした颯馬の俺の肩を持ってくれた気持ちだった。

「きっと、また来てくれるよ。自分に此処までしてくれる男の子なんてこれから先巡り会うことなんてないもん」
「最初はどうなることかと思ったけど、決まり切ってたことなんだよな」
「みんなの思い出にもしてくれるなんて律くん卑怯だよ」
「ホントだよね、もう結婚を意識させてあげるなんて流石だと思う」

 そして、俺の恋路に巻き込まれたクラスメイトは、最早、友人の結婚式が間近まで来たかという程の祝言を始めていた。

「外堀から埋めるのに使っちまったみたいで悪いけど、なんつーか、本気だよってぶつけてばっかの俺でいたいんだよ」
「熱いんだよね、ラブコメ漫画に負けてない。勝って戻って来て」

 俺以外に俺のことが意味不明になってる背中を、坊主が無理矢理にでも押してくれた。

「みんなで学区内にいる方々にばら撒こう!」
「律、最期に気持ちを確かめさせてくれ、死ぬとか言わねえよな?」

 これはやばいビラを各々500枚近く背負ったバッグは黒歴史に塗れていた。

「そんなことより配った俺は私は大丈夫か?って心配だろ、大丈夫だよとは言い切れない。だって、アイツ次第では死にたくなって、そのまま俺がみんなの前からいなくなるなんてことはあるんだと思うけど、そん時は俺が支える代わりにみんなで俺を支えて欲しい。だって障害者手帳確定だよこれ…」

「恥ずかしくなってきた。お前はもっと堂々としてろ」
「さっきから顔が熱くなって来た。青春ごっこも程々にしないとみんなのお母さんが出てくるんじゃない?」
「それ、やっかむって関東では言うんだけど、青春なんて厄介なモノもこの世にねえんだから仕方ねえよ」

 クラス内は、皆城芳乃歓迎祭に準備したものの土壇場になってつまらないことばかりを意識始めた。それは…
全員の頭の中にこんなのウケんのか?ってクソ男が詰まってたからでもあった。

「投げ捨てられてもいいじゃねえか、わかるやつにはわかるし、わからんやつにはわからん。それがハッキリしてるのが一番のお笑いだって…お前が…これはお笑いなのか?」
「わかんない。もし、皆城さんもそうだったらどうするか天野君考えてた?」

 背中を押してくれてると思ったら、前から急に止めだし始めたクラスメイトの為にも、もう一度我を振り返ってみるようにチラシを見る。

【お前が好きっつたから全部用意してみた。その好きばっかを好きな俺と回れば誰に感謝祭の催しかもわかるんじゃねえか?】

「お前って誰だよ…」
「何度見ても病院紹介されそうだよね」
「気になって来てくれる人はいそうではありますけど」

【もしも、つまんなさそうなのばっかだったらお前が今すぐ俺を止めてくれ。中止にするし、代わりだってある】

「予防線張ってるこの文はやっぱり消した方がいいと思うな」
「もう刷っちまってる。今更遅いって」
「詰め込み過ぎて結局何が言いたいのって放置されるかも。出し物絞った方がよかった気もしてきた」
「頼んじまったし、練習もしてくれてるって」

【来てくれなかったらどうしようって最近そんなのばっか。来いって、お前がいないとみんな寂しいじゃんかよ】

「これは面白いと思います。自分の感情に、皆城さんも、みんなも無理矢理共感させてるんだから。普通は逆ですよ、お笑いです」
「まあ、みんなが迷惑をかけられてると思えば、皆城さんも来ざる負えない気はして来そうですけどね」
「でしょ、新手の脅し。怖いの好きっつったし特にここなんて文字色も合わさってメンヘラでも強いならゴリ押せそうじゃん?」
「その自信は危ないと思うなあ〜」

【怖くし過ぎたわ。お前にガチって俺にビビんな?どうせ家で俺に腰引けてんだろ、助けてやるし、大きなお世話とか過保護だって俺でもわかってるんだけど、ごめん、キモイよな。もう来なくていいわ、お前の好きにすりゃいいじゃん】

「めんどくせえ〜 女子越えてんな?」
「待って、ここすごく女子っぽい」
「よく読んでみるとギャルっぽいね笑」
「これはいくらその顔でもモテませんよ…」

「自分でもわからんくなってきた。アイツと出会ってからの俺おかしいんだと思う」

 そんなビラは人に配るのも面倒くさいと、紙飛行機だったり折り紙の形となり、町内をゴミだらけにした。

お年玉どうぞ AQNT - QA34KW - RMXCU
       AQ6E-GCX7C7- TR7C7
       AQS4 - EDQHXU- KMKCK
       AQRB- 4BLF46-5V3CC
       AQRB- ASWEQR- XSKCL
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