お利口?不良?ハイスペ御坊ちゃまがご令嬢と熱愛してスパダリになっちゃいました♡

7.なんか拾ったんだけど

Yoshino

「お嬢様、お嬢様。これは不味いですよ」
「星川(セガワ)焦ってどうしたの?」

 私より歳が幾つばかりか上の学生侍女の星川さんが、彼女には珍しく慌てた声を出してノックもせずに、寝室に入って来た。

「天野さんが、お嬢様に向かって暴れ始めたみたいです。これなんですけど目を通されましたか?」
「貸して」

 私からはたった一言だけ、気持ち悪いとビラを丸めてゴミ箱に投げ捨てる。

「御当主様に見つかられては、ご破綻になってしまいますよ」
「どういうこと?」
「どうもこうも、お嬢様にとって危ないだけの男じゃないですか。これ郵便物ではなく、街で拾ったものです。それも一枚だけじゃなく…」
「嘘よね?」

 また信じられないことをして来た。凍りついた鋭い目で、侍女に指示を出す。

「全部拾って集めて来て。誰かが拾ったモノ含めてよ」
「そんな無茶です」

 年上でしょ?しっかりしてよと、財布からお金を出そうにも持たされていなかった。

「困らせてくれるわね。お父さんにお願いしてみる」
「待ってくださいお嬢様。彼のこと諦めないといけなくなりますよ」
「私は律の将来が心配なの!こんなの彼の汚名以外の何物でもないでしょ!?もっと自分を大切にしてっていつも言ってるのに!」
「落ち着いてくださいお嬢様。今の全部妄想ですよね?それも御当主様にご心配を掛けさせてしまいます。こんな男のどこがいいんだ!?なんて返すおつもりですか?」
「私以外が彼を否定しないでよ、私を泣かせる気?それをしていいのも彼だけなの、侍女ならもう少し私の気持ちもわかってよ、お願いだから‥」
「おお…すみません。そこまで進んでるとは知りませんでした」

 だったら仕方ないかと、ベッドに横たわり、片肘を支えにした私は、背中を掻きたくなる気持ちを抑え込み、私をビラなんかで丸め込もうと困らせに来る男に罰を与えたくなった。

「別に好きだから言ってない。あんな男嫌いよ。電気消して」
「あんまり大きな声は出さないで下さいね。おやすみなさいませお嬢様、私達の方でなんとかしておきます」

♢♢♢
RITSU

「またやらかした。上手く出来ないわ。勉強しねえと」

 もう寝ようかと横になった俺は、雑念を振り払いたい気持ちで勉強机に座る。

(ちゃんと勉強出来てんのかよアイツ、戻ったら俺が教えてやらねえと)

 ここ読んだらわかると思うけど道長ってのも、頼朝ってのも俺の性格に似てるし、信長ってのも俺に超似てんだけど、天下人の正室に入るってどんな気持ち?
な邪な家庭教師になるのに、中学生の歴史の教科書を全部自分に当て嵌めて読み込んでたら明け方になっていた。

「今日戻って来たらどうすんだってなにも考えてなかった」

 俺は急にハッとし、皆城芳乃を連れ戻すことばかりで、連れ回す計画を失念していたのに、そのおかげか気づいた。

「父上いる?」
「もう会社行ったわよ」

 階段を転がるように降りた俺は、急足で居間に向かって、父親からデートのアドバイスを貰いに行ったが間に合わなかったようだった。

「母上でいいや。父上とキスするまでどんなデートしたか丸パクリさせて欲しい。紙とペン持って来たから書いてみてよ」
「恥ずかしいでしょ、自分で考えなさい」
「やっぱり最初は、みんなで遊んでるとこに彼女を混ぜるのがいいんだ。それで、歌とか運動で差を見せつけて、素敵って顔したら、俺にしとけって肩を抱き寄せて、手を結ぶ。それで、お互いドキドキしてきたら、落ち着けと顔を近づけるんじゃなくてさ、俺の胸にアイツの顔を持っていくんだよ、聴こえてる?って落ち着かせる。するとどうなると思いますか?」
「計算高いと思われるだけよ、ホストって嫌いな子も多いから、学校に来ないってことはそっちの気かもね」
「なんか冷たいじゃん。温かいモノでも淹れるよ」

 俺が熱くなってんのに冷たくしてくる母親に、ペーパードリップのコーヒーを振る舞って温かくしてよと席に戻る。

「HARIOV60だから話巻くけど、そうやってその子も俺を困らせに来るんだよね。でもさ、こうやって母上の面倒くささにも慣れちまってるから俺だったら付き合い切れるんだけど、それをわかってくれないわけですよ」
「畳み掛ける様に話してくる上にすっごく傷つけて来るのはどうにかならないの?大人な子じゃないと付き合いきれないと思うなあ」
「大丈夫。その子も頭いいし、性格もいいんだよ。だって俺と口喧嘩出来るなんていないよ?絶対に普通の子じゃない感じ、オーラ半端ない」

 俺は、その子に俺を混ぜたい気持ちをコーヒーを淹れることで表していたかった。イカれてきちまうイカれて来ちまうよとなる行動原理は幼い俺は知りもしなかった。

「そうなんだ。よかったわね」
「母上、そうやって話をすぐ終わらせないでお願いだから。続けるとお!続けるとね?マジで可愛い。あんなに虐めたくなる子もいない。唆るって表現が国語だと正解な感じ」
「だから、それが嫌われる。学校に来なくなった原因でしょ?律さん、いい加減にしなさい」
「結局俺を押し付けてんのかあ…」

 コーヒーを最後の最後まで落としてしまった。そんな苦味に喉に痞える出来の悪いコーヒーを今の俺に見立て母親に出す。

「それでね、女の子にも好きな人を好きになりたいペースがあるから、押し付けるだけでも、引っ張るだけでも、それに気を引こうとしてあれこれ駆け引きをしようとすると余計に傷ついて…」
「俺の下から離れていっちまうわけか。もう疲れたって。俺もだよ」
「その顔、律さんも学校休むの?」
「俺がいなかったらアイツの居場所は学校にねえだろ。もう行くよ。母上ありがとうございます。お達者で」
「頼むから死ぬのだけはやめてね」

 ランドセルを背負わず、首を持つかわりに手に取ると、教科書が床にバラけちまったのをしまい直してくれる母上に父上は果報者だなと、俺も頑張ろうと学校に向かった。

♢♢♢

「それでさ、俺の歌を作ろうと思うんだけどレコーディングするには早いかな?こう、離さないって決めちまう感じ?グイグイなんだけど引き寄せられる様な歌詞だったりメロディーが今の俺って思うんだよね」
「バンドは早えって、中学からにしろ」
「そんなムシャクシャしてるなら一人でドラム叩いてみるなんてどう?」
「麻世それだわ。楽器なら、だって皆城って金持ちでしょ?ポップだったりロックは見下しそう。求はバイオリンみたいな敷居の高さ‥待って俺ピアノ弾ける」
「律行けるよ。大人気アニメ」
「キラッキラッで光るならだろ?おうけいおうけい。みんなが演奏会に待ちでしょ?そんで俺はピアノの前にいる。一人のコンクールじゃないって、アイツの力がいるって信じて待つんだ。今の状況にも合うよね?」

 男子四人で作戦会議をしている最中に、変な音が聞こえた。

「もういい加減にしてよ。いくらそうやって話したところで来ないもんは来ないんだから!」
「西野。振っちまったことは悪いとは思ってる。だって赤ちゃんは怖いって」
「は?」
「あれ?」

 自分でもなんの記憶だ?と違和感を覚えつつ、みんなの誤解を解きに俺は口を開ける。

「ごめん。違う子だった。それで、なんでもう来ないってわかるの?」
「わかるわけじゃないけど、一人の女の子に男子四人が束になってるのにみんな腹立って来ない?」
「そんなことないよ、皆城さん綺麗だし」
「もう散って、一人で行かないなんて律君ダサいよ?」
「ちょっと西野さん掻き乱さいでよ。男子の好きにしていいからね?」

 こんな荒れてたっけ?と思うのはどうしてだと日に日にみんなして一人だけ落ち着いてはいられなくなってきた。
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