ドSなあなたへ、仰せのままに。
プロローグ





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「きゃあああ!」

「誰か!救急車を……!」

「こんなの、どう見てももう手遅れだろう……!」


ゴロゴロと灰色の空が低く唸る夜。

ジー……ジジッ……

頼りない電灯に照らされた地面には、2人の遺体から止まることなく流れ出る真っ赤な液体がジワジワと広がっていた。


「おか、さん……?おとうさ……え?」


私がお母さんとお父さんの体に触れると、生暖かくてドロリとした液体が、私の小さな手のひらにべっとりとついている。

その2人は私の両親で、すでに息を引き取っていることを理解しているはずなのに、私はお母さんとお父さんの肩を必死に揺する。


「お母さん!お父さん!ねえ!」


冷たい、どうして?

なんで目を開けないの?道路で寝ているの……?



「お嬢ちゃん、離れて!……って……」



ただひたすらに、両親へ呼びかけ叫ぶ私を誰かが後ろから抱き上げる。

それと共に、何か液体が溢れるような、そんな音が聞こえた。

そして、私を抱き上げた男な人がヒュッと息を呑む音ーー



やめて、私をお母さんとお父さんから離さないで。遠ざけないで。


一緒に居させてーー……。





「子供も刺されてる!早く!」


やがて、急激に眠くなっていく中、近づいてくる救急車のサイレンの音。

それが、お母さんとお父さんにだけじゃなく、私にも向けられている音だなんて、その頃はわかっていなかった。


私から、大切と普通が奪われたということもーー。


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