ドSなあなたへ、仰せのままに。




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あの日と同じ、雷が鳴る夜に私は拾われた。


「すみません、この子が離れてくれなくて」


無表情で何も喋ろうとしない私を抱える男の人が、困ったようにそう言っていた。

お父さんもお母さんもいなくなってしまった私が求めるものなんて、この世にはもうなくて。


夜中に施設をこっそり抜け出して、知らない道を徘徊していた。


そんな時に私が見つけた、真っ黒なスーツを着たお兄さんたち。この人についていけば何か楽しいことがあるかな、なんて。



「……ママとパパはどうした」



首を横に振る。



「……名前は」


「海」



ハッキリと言った自分の名前。お母さんとお父さんが私にくれたプレゼント。



「……食う?」



目の前にぶら下げられた菓子パンに思わず飛びついた私を見て、バスらしき人は静かに口角を上げた。



「ウチ来るか」



私は迷わず頷いた。





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