ドSなあなたへ、仰せのままに。
第二章
私があなたを守ります。
「おはよーございます南様!」
「……朝からうっせぇ」
あれから数日。すっかり全快した私は、今日が休日ということもあって彼をある場所に連れて行こうとしていた。
ーーと、いうか。
「ん……?」
「……んだよ」
私は、妙に髪の毛をいつもより綺麗にセットしたり、おしゃれをしようとする南様をジッと見つめた。
ーー南様は、あれからなんだなおかしいような……?
「南様、そこまで念入りに準備しなくてもーー」
「はっ?別にお前のために準備してるんじゃねえし、つうか俺の部屋に勝手に入ってくんじゃねえ!」
「はぁ……?」
いや、いつも通り……なのか……?
まあいいか、と、開き直った私は、先に玄関へ向かった。
☆ ☆ ☆
「……まじでどこいくんだよ」
「ふふ、内緒」
怪訝な表情で首を傾げる南様に、私は人差し指を唇の前に置いた。
快晴の朝。私のツテで動かした黒塗りの車に乗って、私たちはある場所へ向かっていた。
「この車も、お前のアレ?」
「えーっと……まあ……そんな感じ」
「はぁー」
隣に座った南様は、大きなため息をついた。仕方ないじゃん、私はまだ16歳で、運転免許は取れないんだから!
ム、と頬を膨らませると、南様は肩をすくめてから口を開いた。
「この前も思ったけど、やっぱりお前はアッチ側の人間なんだな」
「へっ?」
予想外の言葉に、私は思わずマヌケな声を出してしまった。
アッチ側……って。しかも、この前もって……?
そこまで考えて、ふと、この前の記憶が脳裏に蘇る。
ーー両手にはピストル。床にもピストル。バッグの中にもピストル。
あの後、色々あったからこのことはすっかり頭から抜け落ちていたけど……。
そうだ、見られたんだった……!
「あ……あー!あれね、あれは……えーと……」
「……あれは?」
あれは……。あのピストルたちは……。
「うぅ……メンテナンスしてただけ、だから……」
『あれはオモチャ』
『この部屋にたまたまあったの』
『街で拾っちゃった』
思い浮かぶ言い訳は山ほどあったのに、結局、彼からジッと見つめられる圧力に耐えられなくて、ついつい本当のことを吐露してしまった。
ま、まあ、今更取り繕おうとしても、もう遅いしね……?
引かれちゃったかな……?見ないようにしていた彼の表情を伺おうと、チラリと横を見たその時。
「到着いたしました」
「……ここで合ってる?まじで」
どうやら、私の目的地に着いてしまったみたいだった。
私が彼の表情を見ようとした瞬間に、彼は窓の外を向いてしまったから。
南様にどう思われたかは、わからなかった。
「さ、降りるよ!南様もはい降りて!」
「はぁ?」
きょとんとしている彼を外から手招きすると、南様はますます訳がわからないと言った表情をした。
「ほら、早く!」
"明光居霊園"
それは、私のお父さんとお母さんが眠っている場所だったーー。