ドSなあなたへ、仰せのままに。




「……なんで」


呆れたようにそう言った彼は、私の姿を見たらなんて言うかな。

笑う?

幻滅する?

可愛くない……って、思っちゃう?




「似合って、ない……から」


「何言ってんのか意味わかんねえんだけど」




カーテン越しに聞こえる南様のため息まじりの言葉に、思わず肩がぴくりと跳ねた。

ほら、やっぱり。南様だって面倒くさいんだ。

だったらこんなところ、連れてきてくれなくてよかったのに……。


そんな思考がぐるぐると頭を回っているうちに、ジワッと目頭が熱くなってくる。

あぁ、ダメだ。私、なんてことを考えてるんだろう。

私なんかにドレスが似合うわけないこと、分かりきってたはずなのに。


南様が言ってくれるなら……って、ちょっと期待してた自分がバカみたい。


唇をぐっと噛んで、私を映す鏡から目を逸らすために俯いていたその時だった。



「俺が選んだ服が似合わないわけないだろ」



シャッ!という音と共に、2人を隔てていたカーテンが勢いよく開いた先には、南様がいて。

彼は、私の姿を一目見ると、後ろを向いてしまった。




「……でも」


「いいんじゃねーの」


「え……?」



それでもと反論しようとする私の声を、南様が遮る。

そんな彼の耳は、後ろから見てもわかるくらいに赤くて。




「何度も言わせんな。似合ってるって言ってんだ、バーカ」




南様はどうしていつも意地悪なことを言うのに、私が本当に欲しい言葉だけはくれるの……?

私をここまでよくしてくれるの……?



いや、きっとそれは、私が彼のそばに四六時中支えなければいけない、ただのボディガードだから。

隣に立っても恥ずかしくないようにしてくれているだけ。



ーーそうだよね?



私は、照れたように頰をかく彼に、いっぱいの笑みを向けた。


「ありがとっ」






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